投資界隈で10年ほど前からよく聞かれるようになった、ICOについてご存じでしょうか。
ICOとは、企業が暗号資産を発行し、投資家に購入してもらうことで資金調達を行う方法です。
しかし、現在ではICOの市場には詐欺師が多く潜んでおり、詐欺被害を受ける投資家が後を絶ちません。
ICO詐欺の対策方法はあるのでしょうか。
今回は、ICOの概要やICO詐欺から身を守る方法を解説します。
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ICO詐欺とは?金融庁が注意喚起も
ICO詐欺は、詐欺師がICOを利用して、投資家からお金を騙し取る詐欺です。
ICO(イニシャル・コイン・オファリング)とは、企業が暗号資産(トークン)を活用して資金調達を行う方法です。
ICOは、企業が発行した暗号資産を、投資者に購入してもらうことで成立します。投資者は、企業が発行したホワイトペーパーとよばれる報告書をもとに、投資するかどうかの判断をします。
ICO詐欺は、上記の仕組みを利用して投資家から不当にお金を集金する手口です。ICOにおける詐欺の多さに対し、金融庁は注意喚起をしています。
ICO詐欺とは
ICO詐欺とは、架空の企業や事業者を装い、投資家から資金を集めることを目的とした不正行為です。詐欺師は、ICOで資金を集めた直後にプロジェクトを放棄し行方をくらませます。
ICOは、企業に大きな利益をもたらすため一時期は世界的ブームとなりましたが、現在では減少傾向にあります。
ICOが減少傾向にある理由の1つとして、詐欺師が作成した架空のプロジェクトに投資した投資家が、不当な損失を被るケースが多くなったためです。
ICO詐欺が増加する背景
ICOに詐欺が多い理由として、以下の表にまとめました。
法整備が不十分 | ICOが始まった当初は法整備が不十分だった。 法改正で、法整備が明確化された。 |
暗号資産の書類は英語が多い | 投資先の企業の公式サイトやホワイトペーパーが英語表記であることが多く、相手企業の評判やイメージで投資してしまっていた。 |
詐欺師も簡単に参加可能 | ICOの誰でも簡単に参加できる性質上、詐欺師が利用する可能性が高い。 |
現在ではICOの法整備が進んでいますが、未だに詐欺師はいなくなりません。ICO詐欺の特徴を理解し、詐欺被害の防止に努めましょう。
金融庁による注意喚起の概要
2017年10月には、金融庁よりICOに関する注意喚起が出されています。
金融庁による注意喚起の主な内容は、以下のとおりです。
- ICOではトークンの価格が下落し、無価値になる可能性がある
- プロジェクトの未実施や商品、サービスが提供されない可能性がある
- ICOに便乗した詐欺事例もある
- 不審な勧誘に注意する
金融庁の注意喚起を確認してからICOを開始しましょう。ICOの法規制に関する地域ごとの問い合わせ先の記載があるため、不明点があればすぐに確認できます。
参考:ICO(Initial Coin Offering)について|金融庁
ICO詐欺の代表的な手口
ICO詐欺の代表的な手口は、具体的に以下のとおりです。
- SNS(ソーシャルメディア)を利用した詐欺
- 偽ICOプラットフォームを利用した詐欺
- 良質なICOに対する自作自演詐欺
- ICOのプレセールを利用した詐欺
- フィッシング詐欺
それぞれ解説します。
SNS(ソーシャルメディア)を利用した詐欺
ICO詐欺師は、投資家に宣伝するために以下のようにSNSを使用します。
- 有名人や著名なビジネスマンを利用した広告宣伝を行う
- 投資の対価として景品や現金を無料で渡す
- SNSのダイレクトメッセージにて勧誘を行う
SNSでICOの投資広告を見て、安易に参加を決めるのではなく、本当に投資する価値があるのかよく検討し、詐欺被害の防止に努めましょう。
偽ICOプラットフォームを利用した詐欺
詐欺師は、有名な暗号資産のプラットフォームと酷似した偽サイトを投資家に利用させ、お金を騙し取ろうとします。
偽サイトを利用した詐欺の方法は、以下の流れの通りです。
- 投資家に少額の投資をさせ利益を出させる
- 投資家が信用したら大きい金額の投資をさせる
- 大きい利益が出たことを理由に手数料や所得税の支払いを投資家に請求する
- 投資家が利益を引き出す手前でサイトを閉鎖する
詐欺師が偽サイトの作成にお金をかければかけるほど、本物のサイトとの見分けがつかなくなります。
投資する場合、詐欺に遭わないために公式ホームページを検索し、正しいプラットフォームから投資をしましょう。
良質なICOに対する自作自演詐欺
暗号資産市場では、詐欺師が自作自演の手法で、良質なICOのトークン保有する投資家を騙します。
自作自演の流れは、以下のとおりです。
- 詐欺師が将来性のあるトークンを見つける
- トークンを持つ投資家に価格が暴落するから手放した方が良いと話を持ちかける
- 上記で騙された投資家がトークンを手放す
- 詐欺師が安価でトークンを購入する
- トークンの価格が高騰したタイミングで売り払う
詐欺師は、狙っているトークンの価格が暴落するように、意図的にインターネット上で誹謗中傷をしたり、虚偽の情報を流したりします。
自身が保有するトークンに対し、売り払ったほうがいいと指摘する人は詐欺師の可能性があります。
投資先の企業情報をしっかり調べ、持ち掛けられた話を鵜呑みにしないようにしましょう。
ICOのプレセールを利用した詐欺
詐欺師は、ICOのプレセールを用いた詐欺を行う場合があります。
詐欺師は、以下のようなプレセール期間中にトークンを売り抜ける手法を用いて、投資家を騙します。
- 黒幕の詐欺師が有名な代表者を用意する
- 投資家が食いつきそうな投資プロジェクトを作成する
- 黒幕の詐欺師は、ほかの詐欺師に限定セールでトークンを購入するよう持ち掛ける
- 上記により詐欺師は安い価格でトークンを購入する
- トークン購入の詐欺師が、一般人にプレセールでの購入を宣伝する
- 宣伝された一般人がトークンを購入する
- 詐欺師はプレセールに価格が上昇したトークンを売却し、利益を出して抜ける
- トークンの価格が暴落し、投資者は損失となる
プレセールとは、企業の会員やサポーターを対象に、時期を分けて徐々に価格を上げながらトークンを販売する期間のことです。
ICOの儲け話には裏があることが大半なので、投資家の方は詐欺師の養分にならないよう、よく検討して投資先を決めましょう。
フィッシング詐欺
ICO詐欺師は、投資家に対しフィッシング詐欺を仕掛ける場合があります。
詐欺師は、投資家に対し偽の投資サイトやICOプラットフォームのURLを送り、利用させようとします。
詐欺師が偽サイトを利用させる理由は、投資家のIDやパスワード、個人情報を抜き出すためです。個人情報を抜き出したら、詐欺師は投資家の仮装通貨を勝手に盗み出します。
投資家の方は、メールやダイレクトメッセージで突然サイトのURLが送られてきても、決して開いてはいけません。
ICO詐欺から身を守る方法7選
ICO詐欺から身を守る方法として、以下の7つを紹介します。
- ICOプロジェクトを理解してから参加する
- あまりにも条件のいい話には注意する
- 金融庁などの注意喚起を確認する
- 公式サイトが日本語だけの場合は注意する
- ICO掲示板の検索に出ない場合は詐欺を疑う
- ホワイトペーパーに記載の開発者名や開発チームを検索する
- 高い配当率を謳っているICOは避ける
それぞれ解説します。
1.ICOプロジェクトを理解してから参加する
投資をする際には、ICOプロジェクトを理解してから参加する必要があります。
以下の資料や情報をもとに、ICOプロジェクトの投資を検討しましょう。
- ホワイトペーパー
- ICOの企画者や経営チームの背景
- 企業のSNSやホームページ
- 過去の開発プロダクト
ICOを行う企業はホワイトペーパーを発行して投資をしてもらうため、ホワイトペーパーを発行していない企業へ投資してはいけません。
ホワイトペーパー以外に、ICOの企画者や経営チーム、過去の実績状況を確認することが、信用できるかどうかの判断基準になります。
さまざまな観点から、投資するICOプロジェクトが信用できるかを検討しましょう。
2.あまりにも条件のいい話には注意する
投資をする際、あまりに条件のいい話には注意する必要があります。特に、「絶対に儲けられる」「リスクがない」といった言葉で投資を促す話は、詐欺の可能性があります。
理由は、ICOでは価格の急激な変動があるためです。暗号資産市場は非常に変化が激しく、価格が急激に変動することがあると金融庁のホームページにも記載があります。
急激な価格の変動があるにもかかわらず、絶対に設けられると謳っている投資話には、投資家を騙そうとしている背景が見えます。条件のいい投資話を耳にしても、鵜呑みにしてはいけません。
3.金融庁などの注意喚起を確認する
投資をする前に、金融庁の注意喚起を確認する必要があります。
金融庁のホームページでは、ICOに関する注意喚起に加え、国内で取り扱う仮想通貨や、登録された取引所を公表しています。
事前に金融庁のホームページを確認して、安全な投資ができるように努めましょう。
4.公式サイトが日本語だけの場合は注意する
海外の事業者がICOをしている場合、公式ホームページの翻訳対象が日本語のみの場合は、詐欺の可能性があります。
海外サイトであれば多言語に対応してもおかしくありませんが、日本語のみの場合、明らかに日本人をターゲットにしています。
投資先の企業のホームページが日本語に対応しているからといって、安心してはいけません。
5.ICO掲示板の検索に出ない場合は詐欺を疑う
ICO掲示板の検索に出ない場合は、意図的に悪評を隠そうとしていることが考えられるため、詐欺の可能性があります。
一方で、掲示板がある場合は、投稿内に詐欺かどうかの書き込みがあるため、内容を確認して判断しましょう。
以下は、代表的なICOの掲示板のURLです。
coin jinja(日本語サイト) | https://www.coinjinja.com/blog |
bitcointalk(海外サイト) | https://bitcointalk.org/ 「ICO名+bitcointalk」 で検索 |
6.ホワイトペーパーに記載の開発者名や開発チームを検索する
ホワイトペーパーに記載の開発者名や開発チームを検索することで、詐欺を未然に防げる可能性が上がります。
検索する方法は以下のとおりです。
- Googleで検索
- linkedinで検索
linkedinは、ビジネス向けのSNSで、実名で顔出し登録が原則です。
linkedinとGoogleでヒットした顔写真が違う場合は、詐欺師を疑いましょう。
7.高い配当率を謳っているICOは避ける
高い配当率を謳っているICOは避ける必要があり、以下の特徴があります。
- 投資者から少額の投資を受ける
- 投資されたお金をICOの広告費用に充てる
- ある程度の資金が集まったら姿をくらます
投資詐欺師がよく用いる、ポンジ・スキームの手法です。
利率だけを見て投資の判断をすると詐欺師の思うつぼなので、気を付ける必要があります。
ICO詐欺の被害に遭った場合の対処法
ICO詐欺の被害に遭遇した場合は、速やかに以下の機関に相談することが重要です。
- 消費者センター
- 警察
- 弁護士
詐欺に遭ってから時間が経過するほど、被害解決から遠ざかってしまいます。
迅速な被害解決には、相談内容に応じて適切な相談先を選択する必要があります。
消費生活センターへ相談する
詐欺被害の疑いはあるが確信できない場合や、適切な対処が分からない場合には、最寄りの消費生活センターに相談しましょう。
相談に対してアドバイスをくれたり、事例をホームページに掲載して注意喚起を行ってくれたりします。
注意点は、消費生活センターは詐欺師からお金を取り返してくれないことです。事例の確認や被害申告について、相談するのがよいでしょう。
警察へ相談する
詐欺師を逮捕してほしい場合や、刑事告訴を行いたい場合は、警察への相談が重要です。被害の証拠を集め、被害届を警察に提出しましょう。
注意点は、警察は民事不介入の原則で、民事事件に介入できないことです。自身で詐欺罪を立証する必要があり、できなければ警察に詐欺師の捜査や逮捕の対応をしてもらうことは困難になります。
弁護士へ相談する
詐欺師から騙し取られたお金を回収したい場合や、刑事告訴の手続きを進めたい場合は、弁護士に相談しましょう。
弁護士に相談すれば、詐欺師とのやりとりや刑事事件の手続きを代行してもらえます。
詐欺に強い弁護士であれば、過去の経験に基づきICO詐欺を始めとしたさまざまな案件に対応してもらえるため、お金を取り戻せる可能性が高まります。
ICO詐欺に遭ったら弁護士へ相談を
ICO詐欺に遭ってしまったと思ったら、詐欺に強い弁護士に相談しましょう。
詐欺被害の解決には、時間をかけずに対応する必要がありますが、弁護士に依頼すれば、行うべき手続きを効率よく済ませられます。
ICOへの投資は、金融庁から注意喚起が出るほどリスクが高いです。ICOへ投資を考えている方は、情報をしっかりと収集し、美味しすぎる話にはのらないようにして、身を守りましょう。
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