深夜に突然彼女から「妊娠した」とLINEが届く。予期せぬ妊娠報告に戸惑いながらも、考えてみれば避妊はしていたはず。不安と焦りの中で冷静な判断ができなくなり、気づいた時には多額の支払いを迫られている…これが近年増加している「妊娠詐欺」の典型的なケースです。
警察庁の発表では2023年の被害件数は前年比60%増。SNSやマッチングアプリの普及で手口も巧妙化し、プロの詐欺グループによる組織的な犯行も。実際の被害者の多くが「まさか自分が」と油断していた点を後悔しています。
本記事では妊娠詐欺の最新手口から具体的な対処法、確実な解決に向けた専門家への相談方法まで、徹底的に解説していきます。
妊娠詐欺ってナニ？
妊娠詐欺とは、交際相手の男性に対して虚偽の妊娠を告げ、中絶費用などの名目で金銭をだまし取る犯罪手口です。2023年の被害総額は約8億2000万円に上り、被害者の大半が20代から30代の独身男性です。警視庁によると、匿名性の高いマッチングアプリでの出会いから親密な関係に発展した後、妊娠を装って金銭を要求されるケースが典型的なパターンとされています。
妊娠詐欺＝妊娠を騙って男性に様々な費用を要求する詐欺
妊娠詐欺は刑法246条詐欺罪（親告罪）に該当する犯罪行為です。実際には妊娠していないにもかかわらず、中絶費用や慰謝料などの金銭をだまし取る手口が一般的です。最近では組織的な詐欺グループによる計画的な犯行も増加中で、グループのメンバーが役割分担をしながら被害者から金銭を搾取するケースも報告されています。
実際の事例では、被害者一人当たりの平均被害額は約120万円。中には500万円以上の被害に遭うケースもあり、若者の人生を大きく狂わせる重大な犯罪となっています。
妊娠詐欺の発生パターン
代表的な発生パターンの一つ目は交際相手との別れ話がきっかけとなるケースです。関係解消を切り出した際に突然妊娠を告げられ、慰謝料や中絶費用の名目で金銭を要求されます。
二つ目はマッチングアプリで知り合った相手から突然の妊娠報告があるケースです。短期間の関係の後に妊娠を告げられ、緊急性を強調されながら金銭を要求されます。
三つ目は既婚者を装った美人局による組織的な詐欺です。夫や弁護士を装った共犯者が登場し、示談金を要求するといった手の込んだ手口を使います。
警視庁によると、被害者の多くが最初の要求額を支払った後も、追加の費用を要求され続けるケースが目立ちます。一度支払いに応じてしまうと、新たな名目で際限なく金銭を要求されるのが妊娠詐欺の典型的なパターンです。
要求される金銭の種類
要求される金銭の内容は実に多岐にわたります。基本的な中絶費用（30万円前後）に加え、産婦人科での検査代（5〜10万円）、入院費用（20〜30万円）が請求される場合がほとんど。
さらに休業補償として50〜100万円、精神的慰謝料として100〜200万円を要求されるケースも珍しくありません。中には「夫への謝罪金」として300万円以上を要求されるといった事例も報告されています。
一度支払いに応じると、「手術に合併症が起きた」「不妊になった」といった新たな理由で追加の支払いを求められることも。被害者の中には、貯金を使い果たした上にクレジットカードのキャッシング枠まで使い切り、消費者金融から借り入れを重ねて多重債務になるケースも少なくありません。
妊娠詐欺のよくある手口とは
妊娠詐欺の手口は年々巧妙化し、プロの詐欺グループによる組織的な犯行も増えています。被害に遭わないためにも、典型的な手口とその特徴を把握しておかなければなりません。実際の被害事例から、最新の手口と対策のポイントを詳しく解説していきます。
避妊具なしでの性行為を要求
最も典型的な手口が、性行為の際に「避妊具は不要」と積極的に申し出るケースです。妊娠詐欺を計画している場合、避妊に関する会話を意図的に避けたり、むしろ避妊具の使用を強く拒否したりする傾向が見られます。実際の被害事例では「生理中だから大丈夫」「避妊具アレルギーがある」といった理由で避妊を拒否するケースが目立ちます。
中には「避妊具をつけると萎えちゃう」「私も生で感じたい」といった性的な言葉で相手を惑わせ、避妊なしでの性行為に持ち込むケースも。フェイク画像やSNSの投稿を巧みに利用し、裕福な家庭の女性を装って男性の警戒心を解くといった手の込んだ手口も報告されています。
第三者からの金銭要求
被害者への心理的圧迫を強めるため、突如として「夫」や「弁護士」を名乗る人物が登場するのも典型的な手口です。多額の慰謝料を要求されたり、示談金の支払いを迫られたりするケースがほとんど。特に「弁護士」を名乗る人物からの連絡は、法的な専門用語を散りばめた内容で被害者を恐れさせる手口が一般的です。
実際の被害事例では、「夫」を名乗る人物から「妻が精神的に不安定になっている。慰謝料500万円で示談に応じる」といった連絡が入るケースや、「弁護士」を名乗る人物から「このまま法的手段に訴えれば、あなたの人生は終わります」といった脅迫めいた内容のメールが届くケースが報告されています。
脅迫によって心理的プレッシャーをかける
「職場に連絡する」「家族に知られたくないでしょう？」といった脅迫めいた言葉で心理的に追い込むのも、妊娠詐欺の代表的な手口です。実際の被害事例では、SNSで被害者の友人や家族をフォローし、「お友達にDMを送ろうと思います」といったメッセージで圧力をかけるケースが多発しています。
弱みを握られた状態で金銭を要求されると、冷静な判断が難しくなるのが実情です。さらに「今日中に振り込まないと警察に行きます」「明日までに決断してください」といった時間的プレッシャーをかけられることで、被害者は追い詰められていきます。
別の男性との妊娠を利用した手口
より巧妙な手口として、実際に妊娠している場合も報告されています。本物の診断書やエコー写真を提示され、妊娠の事実を証明されると、多くの被害者が疑いを持てなくなってしまうかもしれません。しかし、たとえ妊娠が事実だとしても、父親が別人である可能性は十分考えられるでしょう。
プロの詐欺グループによる犯行では、実際に妊娠している女性のデータを使い回すことで、複数の男性から金銭をだまし取るケースも報告されています。本物の診断書を入手し、それをスキャンして画像編集ソフトで日付や名前を書き換えるといった手の込んだ手口も確認されています。
妊娠詐欺に遭わないための対処法
日頃からの備えが何より重要です。基本的な注意点を押さえておけば、被害を未然に防ぐことができます。特に以下の3点は、妊娠詐欺から身を守るための重要なポイントとなりますのでぜひ覚えておいてください。
知らない人との性交渉はしない
マッチングアプリやSNSで知り合った相手との気軽な性交渉は徹底して避けましょう。警察庁の統計では、妊娠詐欺の被害者の約8割が出会って3回以内の相手との関係で被害に遭っています。相手の素性が分からない状態での関係は、妊娠詐欺のリスクが極めて高くなります。
特にマッチングアプリでの出会いには要注意です。プロフィール写真を盗用されたケースや、サクラを使った組織的な詐欺も横行しています。見た目の印象だけで判断せず、相手の身元確認を慎重に行うことが重要です。
避妊に関する自己防衛を徹底する
避妊具の使用を拒否する相手との性交渉は絶対に避けるべきです。また、個人情報も簡単に教えないようにしてください。特に職場や家族の連絡先といった重要な個人情報は、関係が深まるまで開示を控えましょう。性感染症予防の観点からも、避妊具の使用は必須です。
実際の被害事例では、相手の甘い言葉に流されて避妊を怠ったケースが大半を占めています。一時の感情に流されず、毅然とした態度で自己防衛を徹底することが重要です。
診断書の原本確認を必ず行う
メールやLINEで送られてきた診断書の画像は、簡単に改ざんが可能です。必ず病院が発行した原本の確認を要求しましょう。「一緒に病院に行きましょう」と提案した時の反応も、真偽を見極める重要なポイントとなります。
警察庁によると、実際の妊娠詐欺では9割以上のケースで偽造された診断書が使用されているとのこと。画像編集ソフトの性能向上により、一見して偽物と判断することは困難になっています。そのため、原本確認は必須の対策です。
妊娠詐欺を疑った場合の確認方法
妊娠詐欺と確信が持てない場合でも、いくつかの方法で真偽を確認できます。以下の3つのポイントを押さえ、詐欺の可能性を見極めましょう。
医療機関での妊娠確認
産婦人科での妊娠検査や母子手帳発行状況の確認を強く要求します。正当な妊娠であれば、医療機関での確認を拒む理由はまったくありません。むしろ、妊婦の健康管理の観点からも、速やかな医療機関の受診は必須です。
実際の妊娠詐欺被害では、「実家の産婦人科に通っている」「遠方の病院に行っている」といった理由で、医療機関での確認を拒否されるケースが多いと報告されています。こうした対応は詐欺を疑うべき重要なサインといえるでしょう。
妊娠週数と時系列の整合性
性交渉の日付から妊娠週数を計算し、提示された検査結果の日付と照らし合わせることで、不自然な点がないかを確認します。妊娠週数の計算は比較的簡単で、最終月経開始日から数えることが一般的です。
妊娠検査薬で陽性反応が出るのは、通常、受胎から約2週間後。医療機関での妊娠確認が可能になるのは、おおよそ5〜6週目からとされています。明らかな矛盾点があれば、詐欺を疑いましょう。
提示された証拠の真偽確認
診断書の印影やフォーマットが不自然でないか、細かくチェックします。特に病院の住所や電話番号、医師の資格番号といった詳細情報は必ず確認しましょう。可能であれば病院への直接照会も有効な手段です。
実際の被害事例では、存在しない病院名を使用したり、実在する病院の情報を流用したりするケースが報告されています。診断書の体裁は本物そっくりでも、細部に不自然な点が隠れているかもしれません。
被害に遭った時の対処法は？返金を受けるには
万が一被害に遭ってしまった場合でも、冷静な対応が重要です。金額の大小に関わらず、プロ相手でもあきらめることはありません。被害直後はパニックになりがちですが、そこで冷静な対応ができるかどうかが返金の成否を分ける分岐点となります。まずは落ち着いて、以下の対応手順を確認しましょう。
まずは証拠を保全
LINEやメール、SNSでのやり取りは全てスクリーンショットで保存します。通話内容も可能な限り録音しておくことが重要です。特に金銭の要求や脅迫的な内容のメッセージは、必ず証拠として残しておきましょう。
携帯電話の機種変更や、アプリのアップデートで過去のメッセージが消えてしまうケースもあるため、重要なやり取りは必ずバックアップを取っておくことをおすすめします。また、振込みの際の受領書や振込票も大切に保管しておきましょう。
安易な示談交渉に応じない
示談書の作成は極めて慎重に行う必要があります。支払う場合も必ず金額や支払い日時の記録を残します。追加の要求を防ぐため、相手に請求書の発行を求めるのも有効です。
示談交渉の場では、必ず信頼できる第三者を同席させましょう。相手の言葉巧みな話術に乗せられないよう、冷静に判断してください。また、示談書にサインする前に必ず専門家のチェックを受けましょう。
専門家に相談して返金を請求する
一人での対応には限界があります。早めに専門家へ相談することで、支払い済みの金額でも返金請求が可能になるかもしれません。特に弁護士や司法書士は、示談交渉や法的手続きの専門家として心強い味方となってくれます。
実際の返金事例では、専門家の介入により8割以上の金額が返還されたケースも。また、刑事告訴と民事での損害賠償請求を並行して行うことで、より確実な解決につながった例も報告されています。
妊娠詐欺に遭った時の相談先3選
適切な相談先を知っておくことで、被害の拡大を防ぐことができます。実際の解決事例から、各窓口の特徴と上手な活用法を見ていきましょう。
警察
警察に相談することで刑事事件化による解決が可能です。ただし、詐欺の確証がないと動けない点に注意しましょう。まずは相談の記録を残しておくことをおすすめします。
実際の解決事例では、最寄りの警察署生活安全課への相談から始めるのが一般的です。具体的な証拠がなくても、被害届の提出は可能です。窓口では「いつ、どこで、誰に、いくら支払ったか」を時系列で整理して伝えましょう。
警察への相談は、その後の民事裁判でも有利に働く可能性があります。被害届の受理番号があることで、弁護士との相談もスムーズに進みます。
また、同様の被害者が他にもいることが判明し、組織的な捜査につながるケースも。実際に2023年には、警察への相談をきっかけに100件以上の被害が発覚し、詐欺グループの一斉摘発に至った事例もあります。決してあきらめずに相談しましょう。
弁護士・司法書士
弁護士・司法書士への相談も有効です。弁護士・司法書士には守秘義務があり、専門的な対応が可能です。法的な解決に向けた具体的なアドバイスが得られます。特に示談交渉や民事裁判の場面では、専門家のサポートが必要不可欠です。弁護士・司法書士が介入することで、それまで高圧的だった相手の態度が一変し、示談金の大幅な減額や分割払いの合意に至ったケースも多数報告されています。
初回相談は無料で対応してくれる事務所も多く、費用面での心配は不要です。また、成功報酬型の契約も可能なため、まずは気軽に相談してみることをおすすめします。
探偵事務所を活用
妊娠詐欺の解決には、探偵事務所が役に立ちます。相手の素性調査や証拠収集に関して、専門的なノウハウを持っているためです。特に相手の身元が不明な場合や、組織的な詐欺が疑われる場合には、探偵事務所の調査力を頼りましょう。
ただし、探偵事務所の選定は慎重に行う必要があります。必ず複数の事務所に相談し、料金体系や調査方法を比較検討してください。
優良な探偵事務所には必ず探偵業の届出番号があります。契約前には必ずこの番号を確認し、さらに過去の実績や依頼者の評価もチェックしましょう。
まとめ
妊娠詐欺の被害から身を守るには、日頃からの注意と冷静な判断が欠かせません。SNSやマッチングアプリでの出会いには特に注意が必要です。もし被害に遭ってしまった場合でも、決して一人で抱え込まず、専門家に相談することが問題解決の第一歩となります。
妊娠詐欺による精神的苦痛でお困りのときは、当メディアで紹介しております、弁護士・司法書士事務所へご相談ください。
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